2017.02.04

味の小人がくれた魔法と大切な約束『魔法をかけられた舌』


『魔法をかけられた舌』

突然の不幸で父さんのレストランを受け継いだ洋吉。
怠け者だった洋吉は評判だった父の味の秘密を知ることなく
ひとりぼっちになってしまいました。

「何もかもおしまいだ」そう思った時、
コックの身なりをした小人が立っていました。

それは食料品の倉庫になっている、地下室の番人をしている小人でした。

店を売ってしまおうかという洋吉に、たった一つ大切な約束を守ってくれるならと、
とびきりの魔法をかけてくれたのです。

小人がくれた魔法、それは失意の中にいた洋吉にとって希望の光でした。
これからは真面目に一所懸命に料理の勉強をして、
父さんが遺してくれたレストランを守っていくと誓ったはずでした。

しかし、魔法のおかげでいとも簡単に欲しいモノを手に入れてしまうと
父さんが遺してくれた味も、小人との大切な約束もすっかり忘れてしまったのです。

shop1.jpg

洋吉は、努力をしなくてもあまりに思い通りにいってしまったために、
大切な小人との約束を忘れてしまったのですが、
忘れないと辛すぎて前に進めない出来事もあります。

そうは言っても完全に記憶の中から消すことは容易ではなくて。
辛かった思いは記憶の奥に隠れて見えなくなってしまうけれど、
ある時、本当に突然に、ぽっと蘇って来る時があります。
その時のことを思い出して、逃げ出したいくらい、
辛くて苦しい感情に戻されるときもあります。

でもその中には、ただ辛い思い出だけではないものもあるような気がします。
辛いことを乗り越えた時を思い出して、
今の自分を見つめ直すきっかけをくれる事もあります。

時には、懐かしく思い返すことも。

それは、きっと、とても難しいことなのだけれど、
憶えておかなくてはいけないこと、なのかもしれません。




2016.04.10

桜林の番兵みみずくと桜の精のお話『緑のスキップ』


『緑のスキップ』

みみずくは桜林の番兵です。
桜林に怪しいものが入らないよう見張りをしています。
ある時、満開の桜の下にいた桜色の着物を着た女の子と出会いました。
「あたし、花かげちゃん」
それは桜が散ったら消えてしまう桜の精でした。

それから、みみずくは花かげちゃんの番兵になりました。
周りが夏や秋になってもここだけは桜の季節が終わらないように。
何かが花かげちゃんをさらって行ってしまわないように。
かわいい花かげちゃんを守ろうと決めたのです。

四月のある晩。
何かに追われている傘をさした小人を逃がしてやると、
なんだか暖かい風がふいてきて眠くなってしまいました。
すると、足音のような不思議な音が近づいてきます。
トット トット トット トット

それは春の緑を夏の緑に変えてしまう緑のスキップでした。




sakura1.jpg


桜の花は咲いたなと思うとあっという間に散り始めてしまいます。
綺麗な花で楽しませてくれるのも束の間。
潔い散り際の美しさも惹かれるところなのかもしれません。

実は、桜の花の良さを感じられるようになったのは大人になってからです。
改まってお花見に行きたいとは思わないのですが、
外に出れば必ずどこかにはある桜の木を日々見ていると、
知らず知らずのうちに花が咲くのを待っていたり、
咲いた花に目を奪われ、心が癒されていくのを感じたりします。
そして散り始めれば…淋しいのです。

私は子供の頃から花よりも緑が好きで、以前は桜も満開の時よりも葉桜になった頃のほうが好きでした。
薄ピンク色の花びらに混じって薄い緑色がいいアクセントになっていくと、
爽やかな新緑の季節になったんだなと嬉しくなりました。
穏やかな気候と爽やかな風が吹くこれからの季節が一番好きなので。

今は、満開の桜も葉桜も、やっぱり好きです。
潔く過ぎて行ってしまうように見えても、
まだもう少し余韻を残して、葉桜も新緑の季節も楽しめそうです。





スポンサードリンク