2017.01.22

子ぎつねと布団屋のおじいさんの素敵な電話『コンタロウのひみつのでんわ』


『コンタロウのひみつのでんわ』

山のふもとに小さな布団屋さんがありました。
おじいさんがたった一人で守っているお店です。

ある春の夕暮れ時、小さな男の子が布団を買いにきました。
「春のふとん」が欲しいという男の子に、
おじいさんは白い小さなバラの模様のついた布団を出してあげました。

「これは、野ばらですね。花ざかりののばらですね。
僕は前からこんなのが欲しかったんです。」

すっかり気に入った男の子は布団を家まで届けて欲しいというのです。


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ひとりぼっちの子ぎつねとおじいさん。
思い出を大切にしながら独りで暮らしている二人を繋ぐのは
山にある秘密の電話です。
でも、冬になると電話ができなくなってしまうのです。

離れていてもお互いに思いやる気持ちを持ちながら、
春になってまた電話で話せる時を心待ちにしている二人の姿に
切なさと暖かい気持ちがこみ上げてきました。

私もまた話がしたいなと思う恩人がいます。
このブログを始めるきっかけをくれた人です。
自分には何もないと思っていた私に、
こんなにも好きで夢中になれるものがあったんだと
気づかせてくれました。

その人の誕生日がもうすぐなのです。
感謝の思いを込めて、この物語を贈りたいと思います。

2017.01.09

いなくなった羊の国と不思議なトルコ帽『ライラック通りのぼうし屋』


『ライラック通りのぼうし屋』

ライラック通りにある古い帽子屋。

無口な店主は職人気質で注文の仕事は少しだけ、
あとは自分の好きな形の帽子ばかりを作って楽しんでいました。
それが奇妙なものばかりで買い手がつかないので、
いつも奥さんにお金の事で文句を言われていました。

ある夜更けのこと、帽子屋がまだ仕事をしていると、
不思議なお客様がやってきました。

それはジンギスカン鍋にされそうなところを
命からがら逃げてきた一頭の羊でした。

羊は自分の羊毛を刈り取って
帽子を出来るだけたくさん作って欲しいというのです。

これから自分が行く「いなくなった羊の国」へ
仲間も連れて行くために必要なのだというのです。
そこは自由で幸せな世界なのです。

帽子屋はトルコ帽を作ることにしました。

そして、こっそり自分の分のトルコ帽も作ったのでした。


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自分の好きなことだけやって過ごしていける世界があったら、
それはもうすぐにでも行きたいと思いますね。
羊の毛で作った帽子を被るだけで行けちゃうなんて。

私も日々妄想してます、そういう夢の国。

いつでも帰ってこられるなら一度は行ってみたい。
そう、いつでも帰ってこられるなら。

きっと、帰ってこられなくなったら後悔してしまいそうです。
逃げだしてしまいたいって思うことは日々あるけれど、
失ったら取り戻せない、離れてから気づく大切なことがあるような気がして
かろうじて妄想だけでとどまっています。

もしかしたら、こんな自由の国を探すために旅立った人もいるのかもしれないと
思いながら。




2017.01.07

真夜中の列車の女の子たち『サリーさんの手』


『サリーさんの手』

上京したばかりのれい子は、線路沿いの部屋を借りました。

北向きで日当たりが悪く、電車の振動や騒音も気になりましたが
お金が貯まるまでの我慢だと借りることにしました。

れい子は人形を作っている工場に勤めています。
サリーさんという金髪で青い目をした布の人形です。

サリーさんの手だけを作るのがれい子の仕事です。
手の形に断たれた布をミシンで縫うだけの日々。
いつの間にか人形の手を作っていることすら忘れるようになりました。
こんなふうに大量生産で作られる人形はただの商品でしかないのだと
思うようにもなっていきました。

そんなころ、真夜中にも電車が通ることに気づくのです。
それは午前三時に走ってくるオレンジ色の客車でした。


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1月5日は、安房直子さんのお誕生日でした。
毎年、この日によせて何か記したいと思っていましたが、
何故か実際には何も書けず、ただ安房さんの作品を静かに読み過ごす日でした。

今年も5日は静かに物語を読んで終わったのですが、
急に思い立ったので書く事にしました。

初めて安房さんの本を買ったのが『きつねの窓』という
ポプラ社から出ていた作品集でした。
その10作品の中に『サリーさんの手』が収録されていました。

初めて自分のものとして手にした安房さんの本。
何度も読み返す中でとても印象に残った物語でした。
うまく言葉に出来ないのがもどかしいのですが、
なぜだか気になってそればかりを読み返したりしていました。

のちに、安房さんは人形がお好きだったということを知るのですが、
物語の最後三行に人形に対しての思いが溢れ出しているように思うのです。


2017年が始まりました。
昨年中はご訪問いただきありがとうございました。
そして、つたない文章をお読みいただきありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。


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