2015.08.30

菊酒つくりの小人家族とある夫婦のお話『ハンカチの上の花畑』


『ハンカチの上の花畑』

郵便屋さんが「きく屋」と言う酒倉に手紙を届けにきました。
以前は大きな造り酒屋でしたが、戦争でいくつもあった酒倉は焼け、
家族も店員もいなくなり潰れてしまったのです。
そんなたった一つ残った酒倉に手紙が届いたのです。

もう誰もいないと思われた酒倉にはおばあさんがいました。
息子からの便りを待ち焦がれていたというおばあさんは
手紙のお礼にとっておきのお酒をご馳走すると郵便屋さんを酒倉に招き入れました。

奥から持ってきた壺を大事そうにテーブルに置くと、
これがとっておきの菊酒だというのです。
「この世に二つとないお酒なんです。」
おばあさんは壺の横に白いレースのついたハンカチを広げて
こんな歌を歌いました。

♪出ておいで出ておいで 菊酒つくりの小人さん

すると壺の中から細い縄梯子がするすると出て来て、
小さな人たちが梯子から降りてきたのです。
それは菊酒の精でした。


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正直者の郵便屋さんはおばあさんから菊酒の壺を預かることになりました。
たった二つの約束事は守るようにと念を押されて。

郵便屋さんはこのあと様々な幸運を手にすることになるのです。
楽しい日々の中で秘密の約束はだんだんと破られていくようになり、
郵便屋さん夫婦の罪悪感も薄れていってしまうようでした。

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この夫婦は欲に目がくらんで正常な判断が出来なかったのでしょうか。
それとも、この菊酒が本性を露呈させるきっかけだったのでしょうか。
これは誰にでも陥る可能性があることだと思いました。
いつの間にか「大事なこと」よりも「楽しいことや得すること」のほうに
心が奪われて誤っていくことに気づかないで過ごしているのかもしれません。




2015.08.14

なんでも消してくれる消しゴム『ふしぎな文房具屋』


『ふしぎな文房具屋』

お客さんが三人でいっぱいになってしまう小さな文房具屋。
ここにはたくさんのかわった品物が置いてありました。
香料ではない本物の花の匂いのするえんぴつだとか、
虹からもらった絵の具、壁の向こう側が見える虫眼鏡、
かいたものが本物のように見えるクレヨンや、
蓋を開けると小鳥の声が聞こえてくる筆箱とか。
だからか、一部の子供や大人の間で有名なお店でした。

ある夕暮れ時のこと、店番のおじいさんがお店を閉めようとしていると
一人の少女がやってきました。
みぞれに濡れて寒そうで、そして悲しそうな様子です。

「なんでも消えるけしゴムください。」
そう言う少女におじいさんが黄色いけしゴムを取り出すと、
「私の心の悲しみも消える?」とたずねたのです。


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なんでも消してくれる消しゴム。
こんなのがあったら、私には10や20の消しゴムじゃ全く足りないだろうな(笑)
そして、その悲しみを消した場所にこの物語のように綺麗な水仙が咲くんだろうか。
咲くといいけど…。

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悲しみとさよならした少女に、おじいさんがくれたなんでも吸い取る吸いとり紙。
「なんでもすいとりますよ。インクでも、絵の具でも、あんたの涙でも」

私もそれが欲しい。


『見知らぬ町ふしぎな村 安房直子コレクション』に収録されています。



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